爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「勘違いの日本語、伝わらない日本語」北原保雄著

著者は国語学者筑波大学の元学長という方です。
とは言っても難しい言語の話ではなく一般向けに良くある言い間違い、勘違いといった例を挙げている本です。
著者はこういった教養書も数多く書かれているようです。

敬語は誰にも難しく感じられるようで、特に最近は接客業の人がおかしな敬語を話すのが話題になることも多いようですが、著者は一般に言われるように敬語が「尊敬語、謙譲語、丁寧語」から成るという説に対し、実は「尊敬語、謙譲語、丁重語、丁寧語、美化語」の5つからなるという風に解説しています。
また、謙譲語というものは一般には「自分がへりくだる表現」と言われていますが、これにも別の解釈をしており、「話し手から他人に向かう動作・物事について、それが及ぶ人物を高める言葉」と定義しています。より的確なものでしょう。
「明日、私は先生のお宅に伺います」は謙譲表現といえますが、これは動作の主体である「私」が行う動作(伺う)の対象である「先生」を高めるということになります。
したがって、「謙譲語」という言葉自体もよい表現ではないと言うことで、必ずしも「へりくだる」という気持ちが入るとはいえないと言うことです。

最近よく耳にする表現で「何々させていただく」という言い方をする人が多いようですが、これも著者は違和感を覚えています。
本来は自分の動作がだれかにさせてもらうのだという捉え方をして「いただく」という謙譲語を使ってその「だれか」を高めると言う構造になりますが、実際にはそのような「あなたの恩恵を受けてしている」などという事実はない場合がほとんどで、著者はある歌舞伎俳優が「このたび、何々を襲名させていただきます」とインタビューで言っているのを聞いて、「だれもさせてやった覚えはない」と反感を覚えたそうです。
敬語はよく使われるからといって正しい使い方をされているとは限らないようです。よくその使われ方を考えてから自分でも使うと言うことをしないと、恥をかくこともありそうです。

他にも最近よく使われる「フツーに」「ぶっちゃけ」「なにげに」などの若者言葉にも解説をされています。さすがに自分では使わないことが多い言葉ですが、あまりにも耳に入ってくることが多いのでちょっと気を抜くと口に出すこともありそうです。用心用心。