爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「幼稚化する日本社会 拝金主義と反知性主義」榊原英資著

著者は1941年生まれで東京大学卒後大蔵省入省、アメリカ留学などを経て局長まで勤め、退官後は大学教授と言う方です。
まあ誰もが認めるエリートでしょうが、その本人がエリート養成して知性を磨けと言われると反発もあるでしょう。

なにより御本人の自分の知性と教養に対する自負はものすごいもののようですが、あれこれの事象にびしびしと言われることは間違っていなければ痛快なのですが、誤りがあることを断言していると痛快ではない「痛い」になります。

ゆとり教育は大失敗であり、昔のような詰め込み・暗記教育に戻せということですが、ゆとり教育というのは時間的な軽減という面も確かに大きいのですが、詰め込みだけの暗記教育で創造力や思考力が育たないと言う反省から生まれたという一面があります。詰め込み教育では創造力が着かず、もしもの際には何の役にも立たないエリート官僚の養成しかできないという反省があったということはどうなのでしょうか。
それに関連し、学校教育でもさらに規制緩和し学習塾を公的に認めよというご意見です。学習塾が効率的で成績向上に役立つと言うのはあくまでも入試対策のためだけであり、それを越えた能力はどこで身に付けるのでしょうか。

企業も倫理が低下しておりそれを立て直さなければならないという主張は確かに一理はありそうですが、そこで引かれた例が食品添加物で「摂り方によっては健康に悪い」と断言されるのもあまりにも一面的な理解だけのようです。
なお、テレビ番組が質の低下が続いているのは、スポンサー企業が視聴率だけを見て番組内容を見ていないというのも間違いのないことで、これは企業も視聴者も責任のあることですが、トヨタ自動車は内容を吟味してスポンサーとなる番組を選んでいるというのも一方的な見方のような気がします。

テレビなどの報道姿勢で「なんでも「ズバッと」切る愚」と批判していますが、その姿勢で通しているのがこの本ではないでしょうか。

アメリカのクリントン政権で財務長官をつとめ、その後シティーグループの経営に当たっているロバート・ルービンとも知り合いと自慢げに書いていますが、ビル・トッテン氏もブログに書いているようにこの人物はアメリカ金融界でもトップでありながら、政権内でそれに資するような政策を進めた張本人とも目されています。これも同じ穴の狢なのでしょうか。