爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「政治家の品格、有権者の品格」金美齢著

著者はテレビなどでもよく見かける方ですが、詳しくは初めて知りました。
1959年に台湾から日本に留学してきたのですが、こちらでの発言がもとで当時の台湾の国民党政府からパスポート剥奪され帰国ができなくなりました。強制送還の危険性もあったのですが無事に日本に滞在し続けることができ、最近になって台湾政府の姿勢が変わったことでようやく台湾に帰国することができるようになったそうです。
そのような経験もあり、台湾や中国に対してはもとより、日本の政治状況についても歯に衣着せぬ発言をできるようになっています。テレビでの発言もそのようなもののため、たびたび出演打ち切りという事態に至っているそうですが、また復活ということもよくあるとか。

書名からも明らかなように、今の政治家が当選目的だけのものになっているということを批判するとともに、政治家に国政への意識を求めることなく直接の利益だけを求めて投票する有権者に対する批判でもあります。
民主主義というものはすぐに衆愚政治に陥る傾向にあるのは間違いないことで、それは政治家が票にならないことには力を入れないと言うことにつながりますが、その根本は有権者がどういったことを票を入れる判断基準にするかによります。政治家の質は有権者次第ということでしょう。
著者が1970年代に台湾から来ていた独立派の仲間が強制送還されかねないという事態に遭遇した際、なんとか国会議員に頼んでそれを防いで貰いたいと言ってもほとんど反応がなかったということです。ただ一人民社党の議員だった曾禰さんという方だけが話を聞いて動いてくれたということですが、そういった議員の人は政治の中心にはなりえなかったようです。
著者は台湾で国民党から李登輝氏が総統選に出馬する際、李氏が台湾民主化を進めるという評判を聞き、反国民党としてのそれまでの立場を変えて李氏に投票するかどうかを決めるために台湾まで3度足を運んで調べたそうです。誰に入れても同じと言いながらいい加減な態度で人気取り政策を出してくる候補者に安易に投票する日本の有権者の態度といかに異なるかということでしょう。

政治家の程度が低いという前に有権者の意識が低すぎるということを言わねばならないということは私も常日頃考えていたことであり、この欄にも事に触れて書き続けています。選挙に棄権する人を批難する声はありますが、くだらない政策に騙されて投票する人々を云々することはあまりないようです。しかし、これまでもこれからもそういった選挙ばかりでしょう。ますますくだらない政治になっていきそうです。