爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「性格を科学する心理学のはなし 血液型性格判断に別れを告げよう」小塩真司著

著者はパーソナリティー心理学が専門で現在は中部大学心理学科の准教授ということです。
血液型性格判断というのは時々大きく取り上げられたこともあり、テレビの番組を賑わせたこともありましたが、最近はひどい流行ではないように見えます。
しかし、大学生の調査では10−15%程度のものがいまだに信じていると答えており、少しは信じるというものも入れると50%以上に上ることもあるようです。
また、他愛の無いものですが、「深層心理判断」などといった心理ゲームは雑誌やネット上などでよく見られます。

血液型性格判断などというものには何の意味もないことはこれまでも数々論証されていますが、本書でも批判されています。B型の人とは相性が悪い。と言われることがありますが、この「B型の人」の部分を「天然パーマの人」「背が低い人」「名古屋生まれの人」と代えたらどうでしょうと書かれています。もちろん、とんでもない話ですが血液型だけは平気でそう言われることがあるようです。

人間の性格を分類するという方法は古代からあれこれ言われてきたということで、昔は四体液説などというものもありました。粘液質とか、多血質といったもので、実はこれを血液型に応用したのが血液型性格判断だったようです。
このような性格の類型化という方法論から現在では性格を次元で表現するという方向に変わってきました。
因子分析を行って、性格を表現できるという方法は1940年代にアメリカのキャッテルという心理学者が提唱したということですが、キャッテルの因子はまだ12個もあったそうです。しかし、そのいくつかがだんだんとまとめられ、今では5個の因子で表現するというビッグファイブという理論が優勢になっているそうです。
その因子とは、神経症傾向、外向性、開放性、協調性、誠実性です。
これらの因子は相互にはあまり関連しないと言うもので、それが個人によって一定の比率で混合されて個人の性格になっていくということです。

このような人の性格というものは、実は時とともに変わっていくこともあるようです。三つ子の魂百までといいますが、人が社会で生活していくその状況により、性格もかなり変わっていくことが確かめられているようです。このような研究は欧米ではかなり多数行われているそうで、結果も出ているということです。
また、性格が親子で似るかどうかという研究も行われていますが、一致度は低いということになっています。遺伝との関係もありますが、性格と言うものの形成は簡単なものではないのでしょう。

本書最終章でふたたび血液型が性格とは関係ないということについて強調され、さらにパーソナリティー心理学というものが日本で隆盛に向かうことを祈って終わっています。性格をきちんと捉えるためにはこの学問の研究がたくさん行われるようになることが必要なんでしょう。なお、経済関係の各種学問との連携が今後の課題だそうです。