爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「イスラーム教徒の言い分」ハッジ・アハマド・鈴木著

著者の鈴木さんは親の代からのイスラム教徒ということで、大学もエジプトのアズハル大学でイスラム学を学び、その後大使館や商社に勤務して中東や東南アジアに在住してきたという方です。
日本人でもイスラム学者の書いたイスラム紹介書といったものはありますが、本当のイスラム教徒の書いたものと言うのは少ないかもしれません。

パレスチナの戦闘や、911のテロなどでアメリカを中心とした社会のイスラム教への見方は非常に厳しくなっています。しかし、イスラム教徒のほとんどは平和を愛する人々であり戦争や暴力を行う人々はごくわずかであるということです。

イスラム教は大きな宗教の中ではもっとも新しく成立しました。預言者ムハンマドは啓示を受けてから亡くなるまである程度の間直接神の声を周辺に伝え続けてきたと言うことがあり、他の宗教と違いほとんどが記録されているという特色があります。そのため、その教えを集めたコーランや周囲のムハンマドの言行を記録したハディースといったものは解釈の余地が無くそれだけで独立していると言えるでしょう。

もちろんイスラム社会にも多くの問題点があり、たとえばコーランアラビア語で書かれていて他言語での学習はできないということから、アラビア語を学ばなければ正確な理解ができないということが障害となっていますが、このために多くのアラブ人以外の信者の理解が難しいという問題があるそうです。
また厳しい日常生活の規制のために他宗教との混在がある地域では軋轢が絶えないというのも問題であり、そのために偏見がさらに拡大しています。
酒や豚肉の摂取禁止というのは厳密に言えば日本では困難であり、わずかな混入も許されなければ何も食べられません。
また、一日5回の礼拝も通常の社会生活では大きな障害となります。

日本人でも興味本位でイスラム教に近づき入信する人もいるようですが、その本質を見て離れる人が多いようです。しかしイスラム教では棄教ということは本当は認められないので危険な状況です。そのためか、イスラム教研究者には信者となった人は少ないそうです。知れば知るほど難しいということでしょうか。

最近の状況では、イラクで過激派の「イスラム国」なる集団が大きくなりいろいろの問題を引き起こしているようです。イスラム教徒の大部分が困惑しているのでしょうが、簡単には収まりそうもありません。欧米日など他国の見方もさらに厳しくなるでしょう。