爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「教科書が危ない 心のノートと公民・歴史」入江曜子著

作家の入江さんが2004年に書かれたものです。
いわゆる「つくる会」が「新しい歴史教科書」なるものを作って物議をかもし、さらにそれを採用するという学校も出て話題になった当時のものですが、歴史教科書は有名になったもののそれと同根の「新しい公民教科書」と「心のノート」についてはあまり知られていなかったようです。私も知りませんでした。

いずれも国のために都合の良い国民を作るというためのもととしか言えないようなもののようですが、その3冊について詳細に検討を加えられています。

第1章は公民教科書から始められていますが、この教科書(というのも寒気がしますが)もお決まりの「なぜ日本人は誇りを失ったのか」というところから始められているようです。どうもこういったことを言い出す人達の「誇り」というのは独特のものがあるようで、国旗・国家を尊重し日本精神なるものを持つということが日本人としての誇りだというように記載されているようです。
続いて戦後民主主義というものを貶めるような記述が相次ぎ、明治期の日本が最良という価値観をそれとなく押し付けるようになっているということです。
第2章の歴史教科書でも、皇民化教育と言うべき内容で、戦前の教科書と見間違うような内容ということですが、これは以前から他でも紹介されてきたものです。

実は本書では第3章の「心のノート」についての部分が大きく取り上げられています。これは公民・歴史が話題にはなったものの実質的にはほとんど教科書として使われるには至っていないのに対し、副読本という形で実際に小中学生すべてに配布されているということもあるからでしょう。
そのためか、内容はかなり薄められオブラートに包まれたかのようなものですが、やはり根底には国家に都合の良い国民を作るという目的が垣間見えるという著者の意見です。
著者の見方はそのようなものでしょうが、どうもそこまでのものかという感覚を受けてしまいました。まあ道徳などというものは偉そうなことを言えば言うほど子供でも裏側が見えるものですので、だいたいが反面教師としての役割しか果たさないものだと思っていますが、それ以上のものでもないように見えます。

しかし、この心のノートは昨年(2013年)に改訂が行われ、「新しい道徳」という題で来年度から配布されるということです。ここにも現政権の姿勢が現れているようです。
日本人としての誇りと愛国心と言って、やっていることはアメリカ盲従というのは、正に反面教師としか言えないものですが、昨今の子供たちはそこまで見通す力を持っているでしょうか。