地震学者で京都大学総長も勤めた尾池さんが東日本大震災のあと巨大地震について一般向けに解説を書かれたものです。
主な記述は東日本大震災ですが、被災者には申し訳ない話かもしれませんが、今回の地震は様々な記録が数多く残り地震学としては貴重なデータが取れたようです。
東京大学のロバートゲラーさんは地震予知研究についてほとんど達成の見込みも無く巨額の研究費を無駄使いしていると批判していますが、著者らは「前兆現象」は確実に存在したという立場のようです。
余震というのは有名ですが、「前震」というのも確実に存在し、巨大地震前後の地震をすべてまとめて見ると3月9日から10日に起こったM7.3の地震が明らかな前震だということです。これは8日までの他の地震とはまったく異なり、11日の巨大地震と確実に関連しているとか。
とはいえ、もちろん振り返って詳細に検討してみて初めて分かったということで、これが予知に使えるということは言えないでしょう。著者もさらに研究を進めればという言い方です。
世界でも巨大地震が発生するというところは限られていて、北アメリカ、チリ、スマトラと日本だそうです。M9を越えるというのはここで見られます。日本の南海トラフで発生する地震もプレート境界面から海溝軸まで達する破壊が一気に起きればM9を越える可能性があるということです。南海は東日本と比べて震源地域が海岸に近いために地震後短時間で巨大津波が来る可能性も強いそうです。
なお、原子力基本法ができた1955年には地震の研究もまだほとんど進んでいなかったのですが、その後地震学も急速に発展してきました。その発展が原発の建設にはまったく生かせていないというのも大問題のようです。
著者は大震災後に福島第一原発の建設記録映画を見て、せっかく高くなっている地盤を削って工事をしているのを見て驚いたそうです。結局、一度建設認可が下りてしまえばあとは何も考えずに進んでしまうものなんでしょう。