爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「読書会」山田正紀・恩田陸著

SF作家の山田さんと恩田さんが、SFの名作を改めて読んでそれについての感想を話し合うと言う企画です。
知らなかったのですが、徳間書店から出ていた「SF JAPAN」という雑誌の連載だったようですが、すでにその雑誌も休刊となっているようです。

毎回、それ以外のゲストも交えて4−5人程度での開催ですが、さすがに専門の作家たちということで国内外の関連する作品なども縦横に飛び出しており中味の濃いものとなっています。
取り上げられているのは、半村良石の血脈アシモフ「鋼鉄都市」U.K.ルグィン、小松左京「果てしない流れの果てに」、そしてご本人たちの作品の山田正紀「神狩り」恩田陸「常野物語」などとなっています。

私も若い頃はSF小説は良く読んでいたつもりでしたが、この中で全部を読んでいたのは「果てしなき流れの果てに」だけ、一部を読んでいたのは「神狩り」でした。そのため参加者たちが討論をしている内容が少々見えにくいということはありましたが、作家がそれぞれどのようにアイデアを作品にしていくかと言う手の内を明かしてくれていると言うこともあり、興味深い内容だったと思います。

半村良はSFと人情話を一つの作品に盛り込みたいと言うことをかねて話していたそうで、「岬一郎の抵抗」という作品ではそれが形となっているということです。そのうち機会があれば読んでみたくなる紹介でした。

著者山田正紀本人の「神狩り」はデビュー作にして代表作ということですが、最初にSFマガジンの1974年7月号に一挙掲載され、その後加筆されて単行本となったと言うことですが、なんとそのSFマガジンは購入して読んでいました。現在の完成版とは一部異なるのかもしれませんが、当時衝撃的な作品でした。しかし、今回の「読書会」で読んでみると作者の手の内もいろいろ分かりました。
作品中に「人間は関係代名詞が七重までしか理解できないのに”古代文字”では十三重になっている」という記述があり、本当のことと信じきっていましたが、実は完全に作者の創作だということです。いかにもそれらしく自信を持って書かれていました。
なお、山田さんは最近「神狩り2」の著述をされたそうです。これにも興味があります。

もう一人の著者恩田さんは私がSFを読まなくなってからのデビューらしく名前もよくは知らなかった人ですが、「常野物語」というのもなかなか興味深い作品のようです。これも機会があれば読んでみましょう。