爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「まともな人」養老孟司著

バカの壁」で有名な解剖学者の養老さんが、2001年から2003年まで中央公論に連載したエッセイをまとめたものです。
中央公論はおそらく小型の本ですが、それの見開き2ページ×2の4ページ分くらいでしょうか。新書版で約7ページずつです。

月刊誌エッセイの宿命ですが、著者本人もその時点の話題を取り上げて毎月の誌面を埋めますので、何年か経ってみるとその時の感覚が失われてしまい、リアリティーがぼやけてしまうということはあるでしょう。
このエッセイの期間中にも9.11の同時多発テロがあり、その印象はまだ誰の頭にも残っているでしょうが、ちょうどその頃首相に就任した小泉の内閣の話はすでにかなり忘れてしまっています。
田中真紀子外相就任のどたばたなども、そういえばそんなこともあったような気がする程度のことになってしまいました。

そんな中でも、養老さんの教育観、教養観などが出ているところはそれほど時間を感じさせない部分もあり、「教養はものを識ることとは関係がない。やっぱり人の心が分かる心というしかないのである。」という文章は、たまたま他で現代の教養についての本も読んでいる中で、意味が深く感じられるものでした。

そういった拾い物もあちこちにあるようなエッセイでした。