爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「これは、温泉ではない 温泉教授の温泉ゼミナールⅡ」松田忠徳著

温泉研究で有名な大学教授の松田さんが2004年に出版した本です。ちょうどその頃はいわゆる温泉施設、スーパー銭湯などでレジオネラ感染が頻発し、死者も出ていた状況だったので行政側の対応でも塩素殺菌を求めるなど、温泉の安全性と温泉の価値というものとの兼ね合いが問題になっていたころかと思います。

”温泉教授”の著者としては、死者が出るような事態は論外ですがだからといって源泉かけ流しの施設にも塩素を入れさせるような行政指導にも批判を加えています。
冒頭に紹介されているのは宮崎県日向市の第3セクターの温泉施設で、なんと開業直後にレジオネラ感染者を出してしまい、死者も出してしまったと言うものですが、循環式のもので当然のことながら塩素殺菌が不可避のものですが、衛生管理体制もまったくできておらず、建設を請け負った会社から引渡しを受けた3セク会社には衛生管理者もいなかったそうです。
その責任体制もあやふやで、市長も責任を取らないままで済まされてしまったとか。

こういった施設がある一方、保健所の過剰対応とも言えるような現象として、源泉かけ流しの昔からの温泉にも塩素殺菌を強制するところも出てきており、道後温泉でもそのようになってしまったとか。これも温泉文化というものをぶち壊してしまうような暴挙だと批判をしています。

著者の言うように、源泉の温泉であっても施設の徹底的な清掃は必要であり、これに毎日労力をかけなければならないと言うのは確かなのですが、それが守られていないところもあるということでしょう。

なお、レジオネラ感染というのは決してなくなっておらず、つい最近もそれで死者が出るということがあったようです。温泉と言えば日本で大きな意味を持つ観光施設ですが、まだまだ問題は多そうです。