爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「西暦536年の謎の大噴火と地球寒冷期の到来」河合潤著

京都大学教授の河合さんはX線を用いた環境分析が専門と言うことです。

火山の爆発が地球全体の寒冷化を招き、各地で異常気象を引き起こして人間社会にも大きな影響を与えたと言う例は数多く知られていますが、西暦536年にも大噴火がありその結果寒冷化したという説を1982年にNASAのストーザーズとランピーノという研究者が発表しました。しかし、肝心の噴火の火山がどれかと言う特定も難しく、また世界各地のいろいろな分析からもそれを補強する例と反対に疑問視する例が出てきていて、いまだに確定しないことのようです。

ストーザーズはさらにそれについての論文も続けて出しており、また他の研究者からもいくつもの論文が出ており、隕石衝突ではなくいずれかの火山爆発はあったようです。
その影響かどうかというところは不明ですが、その頃に冷害、不作、大飢饉があったと言うことは各地の歴史に残っているところで、東ローマ帝国飢饉とペストの流行が起こり、またゲルマン民族の大移動もこれが契機となったとか。中国でも大飢饉で特に北部から難民の流出が多く、それが日本にも及んだと言うことです。
このあたりのところは、各種論文を参考にデビッド・キーズというイギリスのジャーナリストが出版しており、そこでは火山もスマトラにあると言われているようです。

日本においても、アマテラスの天の岩屋の伝説は通説のような日食を現したものではなく、この噴火影響による太陽光の弱化とそれからの回復を表していると言う説もあるそうです。

これが真実かどうか、決定的な証拠は噴火の特定かと思いますが、いずれは分かるでしょう。しかし、河合先生はこの機会に思いをあれこれ述べてみようと思ったのか、ややあちこちに脱線が多いようで、少し読みづらい本となってしまったようです。少々分かりにくいことになってしまったようです。