爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”漢検事件”の真実」野田峯男著

漢検事件というと、2009年に持ち上がった漢検(漢字能力検定協会)にまつわるスキャンダルの事件で、当時の理事長親子が逮捕起訴され有罪となったというもので、その騒ぎは記憶にあります。
その概要は漢字検定の受験料を高く取ってそれを理事長が私的流用していたと言うようなものだという理解でした。

しかし、ジャーナリストの著者がこれは冤罪であると言うことを証明しようと書かれた本です。
漢検は1975年に任意団体として元理事長で株式会社オークの経営者の大久保昇が設立したもので、最初のうちはまったく漢字検定受験者数も伸びず運営費もオークから注ぎ込むような状態だったのが最近になって急に受験者が増え、受験料収入も急増したようです。これに目をつけた京都の有力者が乗っ取りを謀り、勢力下の新聞記者を使いでっち上げ同然の報道をし問題化したというのが著者の指摘です。
さらに、その当時は公益法人の管理体制を刷新しようとする政府の思惑があり、それとうまく合致したこの事件をスケープゴートとするということになりました。
裁判での一罰百戒という言葉が出たと言うこと自体、異様なものだったということです。

真相はどうだったのか、一方の話からだけでは分かりませんが、ありそうな話とも言えます。急な収入増を適切に処理する方向付けに失敗したような旧経営陣のミスはあったのでしょうが、とても立件できるようなものでもないようにも見えます。

その後がどうなのか、よくは分かりませんがまあ「儲かりすぎは危険」という教訓だけはありそうです。縁はなさそうですが。