爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「古地図からみた古代日本」金田章裕著

当時京都大学文学部の教授だった金田(キンダ)さんが専門分野の古代の地図について細かく解説されています。
地図といっても世界図といったものとは異なり、一つの村や町だけを表した大縮尺図というものは古代ローマのものは知られているものの、他の文明ではほとんど知られていない中、日本では8世紀の奈良時代に荘園図や班田図と言われる地図が盛んに書かれており、現在でも多くが残っているそうです。
中国文化を取り入れて条里制や班田収受などの政策を取り始めた頃のものですが、中国にはこのような縮尺の地図は残っておらず、日本独特のもののようです。

その当時は公的な管理の下に班田を分け与えるという制度が行われる中、東大寺などの大寺院の荘園というものも広がっており、各地で両者の争いも起こっていてそれが地図を描いて正確を期すという要望を招いたのかも知れません。
一つ一つの地図を調べていくと、地形の描写の間違いというものも見られ、それが土地の所有の争いにつながったという例もあるようです。

また、あくまでも田の所有の明確化という目的のためだったからか、周囲の山地や河川の描写はいい加減なものもあり、また正確なものも見られるとか。

日本の「土地神話」というものはバブルの時代には盛んに言われたことですが、土地第一の意識は古代から変わらずに残っていたということなのでしょうか。