爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「デフレ救国論 本当は怖ろしいアベノミクスの正体」増田悦佐著

経済アナリストの増田さんが2013年2月というアベノミクスなる経済政策が動き出そうとする時に出された本です。

デフレ克服というものが合言葉のようになり、あらゆる手段でそれに対抗という風潮になっていますが(その割には大したことはやっていないようですが)そもそもデフレがそんなに悪いことなのか、インフレになれば誰が得をするのかといったことを解説されています。

インフレになって得をするというのは、資金を借りることができる人々、つまり企業経営者などの特権階級です。一般庶民は銀行に金を預けることはできても借りることはほとんどできません。つまり、インフレになっても庶民はほとんど恩恵はなく苦しくなるばかりということです。インフレにしたがっているのは借りて儲けられるほんの一部の人だということです。

雇用問題もデフレのせいだと言われていますが、これまでのデフレの歴史を見てみると、デフレの時ほど労働分配率が向上するようです。かえってインフレになると低下しており、経営者だけが儲かると言う構造が明らかです。

さらにアベノミクスの一環として国土強靭化という名目の公共投資増加も挙げられていますが、このように政府の経済関与を増やしてまともに戻ったためしはないようです。そのまま戦争になだれ込んでしまったという歴史が多いとか。
金融緩和でインフレ実現というのも怖い話で、国債金利上昇につながれば財政はほとんど破綻してしまいまともな運営はできなくなりますが、このあたりも見通しが甘い(というかほとんど見通しがない)ということです。

著者の危惧は強いものですが、それから1年が経っていまだに社会全体としてその呪縛から逃れられていないようです。そもそもまだまったくデフレ脱却の効果自体が上がっていないようで、未だに賃金上昇などと言っている状態です。効果が上がらないこと自体が問題なような気もします。