爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「白い仮説黒い仮説」竹内薫著

サイエンスライターの竹内さんが、科学の仮説に関していろいろと記した物です。
竹内さんという方が科学関係のものを書いているということは知っていましたが、東大物理を出た後アメリカの大学に留学し博士号をとって帰ってくるまでは研究者の道を歩くはずが、相対性理論について解説したものを書いたつもりが相対性理論批判本に載せられるという事態で研究者の道を閉ざされた(本書に書いてありました)ということは知りませんでした。

日本では科学ライターというものがまったく育たない土壌だということは言われますが、このような異常事態でもなければ竹内さんもこの道には入らなかったんでしょう。

まあそれはともかく、科学理論というのはすべて仮説であるということはよく言われますが、その割に一般にはまったく理解されていないということもあるようです。
ほとんど真実であると広く認められているものが「白い仮説」、ほとんど真実ではないと考えられているのが「黒い仮説」ということで、例を挙げて解説されています。
黒い方では、マイナスイオン、ミネラルウォーター、血液型性格分類など、また平均所得何百万円と発表されてもその所得の人はかなり高所得になるというからくりや、テレビ番組の視聴率は誤差が少なくとも3%以上はあるので、それ以下の数字で順位をつけても全く意味がないとか、まああまり科学的な話題に詳しくない人にとっては驚くような話なのかも知れません。

著者の専門分野の話では、GPSのために飛ばせている衛星の時計は地上の時計と比べてごくわずかにずれるのは相対性理論のためだそうです。相対性理論自体も仮説ではあるのですが、実際に時計がずれるところから仮説の信頼性が上がっていると考えられるそうです。なお、相対性理論には特殊相対性理論一般相対性理論がありますが、特殊相対性理論によれば衛星の時計は地上より遅れ、一般相対性理論によれば進むそうです。その理論はちょっと判りませんが、その両方を計算したものと実際がちょうど符合するということです。

なお、この本も2008年発行ですので、3.11以前の本の宿命として原子力発電は不可避という立場になっています。その当時の最大の問題は「臨界事故」だったのですが、臨界といえば異常事態というような報道がされていましたが、原発内部では常に臨界状態だというのは当然の指摘でしょう。