爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「イタリア遺聞」塩野七生著

これも塩野さんのエッセイ集で、1979年から3年間、雑誌「波」に連載されたものをまとめたものだそうです。
「現代」について書かれた部分ではすでに相当変化してしまった点もありますが、古代・中世について記された部分にはまったく劣化したものはありません。

あとがきに、佐々淳行さんも書かれていますが、高級なサロンでの会話のタネにしたいような洒落た話題がちりばめられているようです。
たとえば、出版業というものを始めたと言える、15世紀ヴェネツィアのアルド・マヌッツィオはエラスムスを校正係として雇っていたとか、滅亡寸前になった18世紀終わりのヴェネツィアの外交文書記録の中に、独立したばかりのアメリカ合衆国ベンジャミン・フランクリンからの外交文書があるとか、それについて、ヴェネツィアの駐仏大使ダニエル・ドルフィンの付帯文書が面白いとか、またその直後、ヴェネツィアを占領したナポレオンは美術品の数々をフランスへ強奪していったが、その後の交渉で徐々に返還されていったものの、いまだにフランスに残っているものは最上のものであるとか、結構面白い話題になりそうです。(ただし、このようなことを語るに足る人が居ればですが)