爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

カンピロバクター食中毒は年間350万人

食品関係の情報が非常に詳しく出ているFOOCOM.NETで、編集長の松永和紀さんが紹介している研究報告で興味深い記事が出ていました。(http://www.foocom.net/column/editor/10097/
それによると、食中毒の中でもカンピロバクターによるものが、一応保健所に報告されている正式な患者数は2011年で年間2300人あまりということですが、届出をしない軽症者を含めると年間350万人が感染し発症しているという推計を研究発表されたそうです。
日本では食中毒者数の発表は保健所などではっきりと病原菌まで確認されたものだけですので、実数よりはるかに少ないものだということはよく指摘されていますが、確かにその通りでしょう。

記事の研究は、国立医薬品食品衛生研究所の窪田さんという方が実施したもので、一般の家庭に電話取材をして食中毒発症の推定をしたというもので、その手法自体には妥当性の議論はあるでしょうが、正確ではないにしても相当数の発症者が居るというとこには間違いはなさそうです。

カンピロバクターは家畜(牛豚、鳥など)の腸管内に常在し、(健康な動物にも居る)その状態では病原性を発揮することはないのですが、屠殺し食肉にする工程で肉に付着することがあり、特に鶏肉には多く存在することが知られています。
よく鳥料理店などの経営者が、「うちの肉は新鮮なので大丈夫」と言うのを聞きますが、カンピロバクターはかえって新鮮な方が多く含まれていることがあります。
そのわけは、カンピロバクターという微生物の生育条件にあります。細菌には「好気性」「嫌気性」という生育条件があり、生育に酸素を必要とする「好気性菌」と酸素が要らない「嫌気性菌」がありますが、カンピロバクターは「微好気性菌」という特殊な生存条件を必要とし、酸素が3-15%(カンピロの中でも種により異なる)という条件下で無ければ生育できません。(大気中酸素濃度は20%)
また、乾燥するとすぐに死んでしまうという性質もあります。つまり、食肉製造の過程で腸管から肉に付着したカンピロバクターはそこから増殖することはできず、どんどんと死滅していくばかりなのです。
したがって、料理店に入荷した肉にカンピロバクターが付着していると、新鮮なうちに食べるよりはしばらくしてから食べた方がカンピロバクターに関しては減少している可能性が強いことになります。(大腸菌などは逆ですが)

もちろん、しっかりと加熱してやればカンピロバクターは完全に死滅し、毒素を残すこともありませんので害にはなりません。問題は「新鮮だから生でも食べられる」と勘違いしている料理屋です。本当は「新鮮だからカンピロが死なずに残っている」というべきなのです。

日本人はこれまで延々と魚の生食を追及し続けてきたせいか、生食信仰に近いものがあるようですが、魚とはまったく違う状況があるということは強調していくべきでしょう。