爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか」水野和夫著

金融証券各社に勤め、現在は埼玉大学客員教授と言う水野さんの2011年9月の本ですが、非常に怖い内容です。ただし、私もはっきりとはしないまでも恐れを抱いていた問題について極めて明確に説明されていますので、すっきりと頭に入ってくるものでした。

この本の出版のあと、現在はアベノミクス成長戦略と言って喧伝されていますが、そのようなものは全く意味を持たず、さらに傷口を開くだけと言うことが良く分かります。

歴史的に見れば古代ローマ帝国滅亡後、中世を経て16世紀から近代に入りますが、その最初の頃が現在と同様に低金利が続く時代だったそうです。そこからちょうど新大陸発見などが好都合となり、さらに石炭石油の化石燃料使用が本格化したため、資本主義の拡大が続く「近代」が続きました。
しかし、1970年代に石油ショックが起こったことで、実質的にはそのような「近代」の終焉が始まったと言えるようです。
たまたま、その当時にコンピュータの発展が起こったために、特にアメリカを中心にITが発達し、「電子・金融空間」が作られたためにそれまでよりさらに大きな発展が遂げられた。しかしそれは「バブル」にすぎず、リーマンショックでそれすらも終わりを告げたと言うことです。

もはや成長が望めないと言う最大の理由は石油をはじめとするエネルギー価格が極端に上昇したことによります。高度成長時には1バレル5ドル以下と言う今から見ると考えられないほどの事実上0ともいえる価格で購入でき、だからこそ日本などでも成長ができたのですが、現在では1バレル100ドル以上となり、しかもさらに上がり続ける様相です。200ドル以上になると、現在の経済構造では作れば作るほど苦しくなることになりそうです。
このように燃料価格が上がったために、削れるところと言うと人件費しかなく、際限ない事実上の賃下げが続いています。中間層がどんどんと没落していきます。これも経済の必然のようです。

金利というのは経済政策でもありますが、その意味は資本をいくら持っていてもそれだけでは食っていけないということです。したがってどんどんと投資に向くことでさらにバブル化が進みます。

この本の主張から見える今後のとるべき道は、できるだけエネルギーを使わないで済むような経済にすることでしょうか。それも生半可な程度では駄目かもしれません。