「サイレント・マジョリティ」とはよく言われる言葉ですが、塩野さんは1937年生まれてという年代が上も下もかなり発言が目立つ中であまり言葉を発しない世代ということを自覚して「サイレント」されに少数派であることも加えて「サイレント・マイノリティ」と自らを当てはめての命名です。
ルネサンス期を中心としたイタリア歴史関連の書を出して有名になった方ですが、このエッセイ集では現代までの広い時代範囲を含めた話題を取り上げ、さらにイタリアだけでなく時々帰ってくる日本についても取り上げたエッセイを雑誌に連載し、それをまとめて1985年に出版したものです。
ルネサンス期の話では、まとまった小説などには書くことのできなかったものも扱われており、17世紀とちょっと遅れた話ですが、ローマに居たジュゼッペ・ピニャータという平凡な人物が、たまたまガブリエレ伯爵という貴族にしばしば夕食に招かれていたため、ガブリエレ伯が政変に巻き込まれ投獄されたのに連座して投獄されてしまったが、執念で脱獄した話があります。まあ小品としかならない程度のことなんでしょう。
現代、といっても当時のキプロスの様子も扱われています。トルコとギリシャの間で揺り動かされた歴史が影を落とし、無人街というものができてしまったのですが、そこに向かうトルコの兵隊が軍として行動できないため民間人を偽装して普通のフェリーに乗っていくところに出くわし、言葉をかわすなどという体験も披露されます。
いろいろと細かい点で興味深いことがあるものです。
フィアット社の経営者のアニエリ一族と言うのは当時はイタリアの影の統治者であったと言うことです。現在はどうなのでしょう。