爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ルネサンスとは何であったのか」塩野七生著

ルネサンスと言うとイタリアで15世紀の頃に起こった芸術の運動と言うイメージですが、実はそれに留まらず宗教や政治方面でも同じような精神活動を基にする動きがあったようです。
作者がルネサンスの最初の動きとして挙げているのは、13世紀のキリスト教の改革者、聖フランチェスコと、同時期の神聖ローマ帝国フリードリッヒ2世です。
聖フランチェスコは、キリスト教会の聖職者の堕落を批判して修道院活動を進めた人ですが、これは一応ローマ法王の認可を取った上での活動です。しかし、実際はキリスト教社会の縦の階層を崩し、聖職者と一般人を同列に見ると言う点で、明らかにルネサンス活動と見なせるようです。
また、フリードリッヒ2世はそれまでの各国の国王がローマ法王からの圧力を避けられず屈服してきたのに反し、破門などの制裁も何食わぬ顔で無視し、勝手に法律や財政などを整備してしまったと言う点で、中世を飛び出そうとした人です。政教分離ということを実施しようとした「ライコ」と呼ばれる人々の先駆けです。
どちらもイタリア生まれでありながら、母親は外国人という似た境遇です。とくに、聖フランチェスコの名前はフランスと言う単語から来ており、それまではまったく見られなかったそうですが、その後はどの国でもこの名前が一般的になるようになったそうで、フランソワ、フランシス、サンフランシスコなどここに始まると思うと少し意外な感じがあります。

その後のルネサンスは教会の権威に押しつぶされずに自由に各分野の表現をするという点から、かつては異教のものとして捨て去られた古代ローマの事物の発掘も含め進められていきます。
イタリアの中でも最初はフィレンツェ、それがメディチ家の追放で混乱するとローマ、スペイン軍の略奪で崩壊するとヴェネツィアに中心を移しながら16世紀まで続きます。

しかし、スペインやフランス、トルコなど大国の力が強くなり、イタリアの都市国家が没落するとルネサンスも一端終焉することになります。

なぜ、イタリアだったのかと言うことは大きな問題のようです。他の国では起こらなかったのは間違いのないところでしょう。