爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ダルタニャン物語11 剣よ、さらば」アレクサンドル・デュマ著

ダルタニャン物語も最終巻となります。別れと死の連続です。
国王のすり替えと言う陰謀を首尾よく果たしたアラミスはフーケ財務卿に秘密を明かします。しかし、フーケはその陰謀に加担することを拒み、バスチーユにルイ14世を迎えに行きます。
その間にアラミスとポルトスは自ら要塞化したベルイールに逃れます。
フーケと共に戻ったルイ14世は偽者の国王、実は双子の弟をダルタニャンに逮捕させます。そして外してはならない鉄仮面をかぶせ、ダルタニャンに命じてサント・マルグリット島に護送させます。

ちょうどその頃、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールより自ら裏切りの告白を受けたラウル・ド・ブラジュロンヌは失意のあまり父親のラフェール伯爵のもとで暮らしていましたが、アフリカ遠征の司令官として就任したボーフォール公爵の訪問を受け、遠征の副官就任の要請を受けます。非常に危険で命を失う可能性が高いことから、ラフェール伯爵は断りたかったのですが、ラウル本人は承諾してしまいます。息子が死を望んでいることを感づきながらも送り出してしまいます。

ルイ14世はフーケを幽閉し裁判にかけると共に、ベルイールに立てこもる反乱軍を討伐するため、ダルタニャンに王軍を率いさせます。ダルタニャンはなんとか友を逃れさせようとしますが、国王の二人に対する処刑の思いは強く、最後はダルタニャンは指揮官を解任され、代わった指揮官のもと総攻撃をかけられます。数人の部下とともにボートで脱出しようとした二人ですが、ポルトスは激戦の末討ち死にしてしまいます。アラミスも警戒していた軍艦に捕まりますが、その司令官イエズス会の会員であることを知り、管区長の権限で命令しスペインに無事逃れます。

ポルトスの葬儀に出たダルタニャンはその直後に従者のムースクトンも死んでしまうところに立ち会います。次にアトスの居城を訪れますが、その時アフリカの戦場で戦死したラウルの遺体を従者のグリモーが持ち帰りますが、直前にアトスも息を引き取ります。二人の葬儀にもダルタニャンは立ち会うことになります。

ダルタニャンはその後もルイ14世に仕え、最後にはフランス元帥としてオランダ遠征に赴くことになります。順調であった戦いですが、最後に本陣への急襲を受け、ダルタニャンは流れ弾に当たって絶命してしまいます。その最後の言葉は「アトスよ、ポルトスよ、また会おうぜ。アラミスよ、永遠にさようなら!」でした。

他の本も参考にすると、この物語は史実をかなり取り入れながら、大胆に書き加えることで非常に面白い結果を見せています。
この巻で言えば、フーケ財務卿が失脚し逮捕されたのも史実、鉄仮面をかぶせられた囚人が居たと言うのも事実のようです。ただし、それが誰かと言うことは分からず、昔からその真相は諸説あったようです。
またヴァリエール嬢がルイの愛人であったことも事実ですが、それが以前に許婚があったかどうかはデュマの想像です。
またダルタニャンがオランダ遠征の際に戦死したと言うことも史実のようです。

さまざまな史実に想像を膨らませて大きな話を作り上げた、デュマと言う作家の力量でしょう。