爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”わかりやすい経済学”のウソにだまされるな!」益田安良著

経済を分かりやすく解説するという本も多いのですが、経済というものは非常に複雑な要素からなるもので、それを簡略化して説明しようとしても相当違うところが出てしまうようです。それを分かっていながら故意に簡単に言い切ってしまうのはポピュリズムということになり、そういった手法を知ってか知らずか使っている人も多いようです。
そういったことを東洋大学経済学部の益田教授が解説しています。

財政再建より経済成長」とか、「日本国債は大丈夫」とか、分かりやすく言い切るのが政治家などでは普通ですが、これらを理解するには5つの視点が有効だそうです。
合成の誤謬、2時間軸のずれ、3セクターの違い、4モラルハザード、5社会目的との相克で、簡単なようなことでもこれらの影響で複雑な結果になるということを知らずに考えていると大きな間違いを犯すということです。

金融緩和でデフレ脱却というのが政策主流となってしまいましたが、これも一面では可能性があるもののいろいろな面での影響を考えればとても危険な考え方のようです。
TPPに関するものも、どうしても不利になる分野があることは当然で、それらを総合的に考えなければなりませんが、そもそも「自由貿易」をするならどうしてもその方向になりそうです。ただし、これも絶対ではないわけで、保護貿易という考え方も存在するのは確かです。自由貿易で得をするのは広く浅く、保護貿易で得をするのは一部だけで大きな利益というのはそのとおりでしょう。

この本を読んで、前々から危ういと感じていた現政権の経済政策がさらに危なく感じられます。

どうでも良いことかもしれませんが、益田先生は「耳障りの良い」という言葉を連発されていますが、ご存知の方も多いと思いますが、「耳障り」「目障り」はその「障り」という言葉の意味から、悪い意味にしか使えません。「手触り」「肌触り」の「触り」とは違います。最初のその表題から気になってしまいました。