環境の悪化、生物多様性の減少、石油枯渇などのエネルギー危機など、現代文明は危機的状況になっていると思いますが、これは成長なしにはやっていけない資本主義経済の基本的な性質から生まれてくるもので、これを避けるためには脱成長しかないというのが著者の立場です。
著者ラトゥーシュはパリ南大学の名誉教授ですが、経済哲学専攻で、以前から現代経済がカタストロフに向けて疾走していくかのような現状に対し警鐘を鳴らし続けています。
しかし、本書は非常に難解な内容であり、また細かい点まで各国、各界の先哲の発言を引用してあり、正確さには優れたものがあるものの、それだけで分かりにくさも倍増してしまっているように見えます。
それは、本書の前の「経済成長なき社会発展は可能か?」というのが一般向けの入門書であったために、本書は学術的な正確さを最重要視して作られているからのようです。前著から読むべきでした。
成長ということばかりを言っているような現在の経済界・政界に対し、それとまったく逆の主張をするというのは難しいことでしょう。その根拠はこの書の内容で十分でしょうが、やはりもう少し噛み砕いたもので広く分かりやすく解説する活動が、日本国内でも必要になるでしょう。