爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「富士山宝永大爆発」永原慶二著

永原さんは歴史学者ですが、専門は中世の経済史ということで、宝永噴火とはあまり関係なさそうですが、ご先祖が小田原藩の武士でちょうど噴火時に被災地の静岡県小山町に住んでいたとのことで、その縁で地元で当時の記録の整理などを行ったと言うことです。
昨今、富士山の噴火が近いのではないかと言う話が行き交っていますが、平安時代に何度か噴火したあと、1707年まで600年あまりは平静だったようです。それが宝永4年中腹から爆発し、溶岩などはほとんど出なかったものの、山体の岩などを吹き飛ばして大量の火山灰を風に乗せて主に東側に積もらせました。今の静岡県の御厨地方、神奈川県の足柄地方に相当の砂を積もらせました。
この本ではその地方のその後の復旧の様子が主に書かれています。

御厨地方には数十センチから数メートルの砂が積もりましたが、元々さほど農業生産もないところだったので、幕府の復興策もあまり取られませんでした。それに比べると足柄地方は当時も米の生産量も多く、また交通も盛んで重要だったため復興策も優先されました。問題視されたのは砂が大量に溜まったことにより、酒匂川が氾濫する可能性が強まったことでした。主にそれを是正する工事が行われたのですが、当時の為政者は無能で、工事も民間に丸投げするだけでほとんど効果を上げられぬままに推移しました。ようやく伊奈忠順により効果的な工事が進められ、さらに民間から田中丘隅、蓑傘之助という治水の名人の力を得てようやく酒匂川の工事は一段落します。
しかし、本当に灰の量の多かった御厨地方ではほとんど除くこともできないまま、今でも完全に取り除けてはいないようです。

今度、噴火が起こればどうなるでしょうか。土木工事で灰を取り除くのははるかに効率的にできるでしょうが、電気系統の混乱とか、昔はなかった問題も大きそうです。