爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「海の都の物語6」塩野七生著

ヴェネツィアに関する物語も最終話になりました。没落から滅亡までです。
スペインやポルトガルによる大航海時代になってもすぐにはヴェネツィアの没落は始まりませんでしたが、やはり徐々にその国を蝕んで行ったようです。それまでの交易のみで生きてきた体制というのがそればかりでは行かなくなり、織物工業などに移っていき、それはそれでかなりの地位を占めるもののその国の体制を徐々に変えてしまいました。さらに農業への移行も進んでしまい、通常の国と変わらなくなってしまいました。
農業や工業に頼る社会と言うのは資本がすべてで、度胸一つでのし上がる可能性のある商業の国とは違ってしまいます。社会の固定化とも言えるのでしょうか。
そして、その割に「普通の国」にふさわしい軍備をせず、海軍はある程度維持するものの陸軍は事実上無いという体制にしてしまいました。

それでも18世紀の一時には文化の面で非常に優れたものを作り出し、ヨーロッパ全体の憧れとなりました。

しかし、フランス革命からナポレオンの出現を迎え、あっという間にすべてを失うこととなってしまいました。それ以前にかなりの軍備をしたとしてもナポレオンの勢いの前にはおそらく何の効果もなかったでしょう。

ヴェネツィアが没落することにより、(ついでながら、トルコも没落しますが)近代が始まったのかも知れません。