SF以外の現代小説はあまり読まないのですが、自分自身が少し前まで金沢に行っており、そのときにこの小説の再映画化があってロケをしたと言う話を時々ローカルニュースで見たりしたので、図書館で見かけてそのまま借りてきました。
舞台はほぼ金沢周辺です。その地名も実在のものを使っているため、目に浮かぶような気もしますが、それは昭和30年当時のもので、現在とは相当異なるところもあります。
東京からの列車は上越線と北陸線経由だったようです。10時間かかってようやく到着です。
金沢からの足は北陸鉄道などを使っていますが、今残っているのは石川線の鶴来までだけになっています。そこから寺井に向かった線も、羽咋から能登に向かった線も廃止されています。和倉温泉を通って能登に向かっていた国鉄能登線も能登鉄道となり途中の穴水までになっています。
現在は自動車天国のような石川ですが、当時はほとんど道も整備されていなかったはずで、どのような光景だったのでしょうか。
なお、小説の上でも重要な舞台である日本海に面した崖は作者の原案通りだとふさわしい場所がないようです。そのため、映画化の最初の時からその舞台を少し北の「ヤセの断崖」というところに設定しているのですが、小説の描写では方向が違うようです。
推理小説としては、それほど出来が良いとは言えない筋書きのようですが、細部にわたる描写は小説として完成されているといえるかも知れません。
それにしても北陸のあの重苦しい冬空を十分に描いたものでした。