爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「フランスの学歴インフレと格差社会」マリー・ドュリュ・ベラ著

パリ政治学院教授で社会学者のマリーさんがフランスの教育現状について書いたもので、2006年発表当時はフランスで論議を呼んだようです。
日本でもその傾向があると思いますが、高校全入、大学進学率大幅アップとなっても就職を見ると昔の高卒・大卒と同様には扱われていないと言う状況がフランスでもあり、それを著者は「学歴インフレ」と呼んでいます。
細かく見た場合、ヨーロッパの各国の間でも教育制度には違いがあるようで、フランスモデルのほかに、ドイツモデル、イギリスモデル、スウェーデンモデル等が例に挙げられています。日本モデルというのも挙げられていますが、これは高卒者が自動車会社などに就職し、社内で研修を重ねて高度な技術者になっていくと言う状況を言っているようで、現在のものではなく数十年前のイメージのようです。

フランスの場合はグランドゼコールという超エリートの学校もあり、それ以外の大学とはまた異なるもののようで、普通の大学出身者にとっては昔の学位取得者とは同じ就職はできないと言う状況は現在の日本と同じようです。

学歴と言うものが本当に能力を現しているのかどうか、それによっては無駄な費用を学生の側にも国にも企業にもかけていることになります。学歴をもとに就職希望者をふるいわけるならば、それにふさわしい能力が釣り合っていなければ本来の能力主義による選抜とは異なるわけですが、それは怪しそうです。

日本の教育についてもこの本の論旨とまったく同様の問題点があります。就職のために長く学校に通わなければならなくなっていますが、実際はそれにふさわしい職業は減少の一途です。かといってそれに背を向ければまともに就職できないことも同じようです。