爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「海の都の物語3」塩野七生著

ヴェネツィアについての物語その3は、ライバルのジェノヴァに関する話と、ヴェネツィアの女性についての話です。
海洋交易国家はイタリアではヴェネツィアジェノヴァのほかにアマルフィ、ピサがありましたが、早くに没落し、長らくはヴェネツィアジェノヴァの一騎打ちの期間が続いたようです。
しかし、その性格は全く異なり、ヴェネツィアが厳格な共和制を守り、市民の協力体制も非常に強固だったのに比べ、ジェノヴァは有力貴族の対立が激しく、国の力としては上手く活かしきれていなかったようです。それでもライバル関係が長く続いたのは、ジェノヴァ人の個人能力、船の操船能力などが非常に優れていたためのようです。まあ、そのためにかえって自分の力だけに頼る行動が多く国内がまとまらなかったのかも知れません。
同じイタリアでも能力・性格に大差が見られると言うのは面白い話です。
女性については、イタリア国内だけでなくヨーロッパの他の国と比べてもほとんど目立った人は歴史上出ていないというのがヴェネツィアの特徴のようです。これは女性の役割がなかったということではなく、男性がほとんど国内に止まらず商用や公用で国外に出ていたため、家の管理などは女性の役目で、訪問者の応対なども主婦が勤めていたそうです。
ただし、あまり教育はされていなかったという習慣のためか、教養ある女性と言うのは家庭婦人には少なく、かえって高等娼婦と言う女性に優れた人がいたようです。

これらの内容は非常に細かいことではありますが、これを見ることでヴェネツィアという国がリアリティーをもって理解できるように感じます。