爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「風刺画で読む十八世紀イギリス」小林章夫斎藤貴子著

18世紀のイギリスの絵画界で大きな存在だったウィリアムホガースについてイギリス文学に詳しい小林さん、斎藤さんが共著で記したものです。
ホガースは貧しい教師の子として生まれ細工職人に弟子入りした後、銅版画師として独立し、風刺版画を出版して流行作家となり、さらに肖像画などにも進出し、大陸に比べほとんど発展していなかったイギリスの絵画界の成立に大きな影響を与えました。
絵画の評価も高いものですが、その風刺画というのは18世紀のイギリスの社会の裏まで詳しく描いており、その批判精神も大きかったようです。
イギリス絵画の独立的な発展と言うものも目指していたために、フランスなどの絵画状況を模倣しようとする勢力がその後に力を持ったために、不当にホガースを貶めるような風潮になったために、後世の評価が「ただの風刺画」とされたと言う要因もあったようですが、実際はかなり大きな存在だったようです。

もちろん、この本はホガースの絵の解説をしながら、18世紀イギリスの特にロンドンの様々な人々の生活も述べています。相当ひどい環境だったようで、それが曲がりなりにも改善されながら発展してきたのが現代だと言うことでしょうか。