爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エネルギー文明論「オイルピーク説」

現代のエネルギー依存文明というものが生物としての人間の状態をゆがめ、石油石炭の化石燃料に依存して過大な人口を抱えてしまって危険な域に入ってしまったと言うことをこれまでに述べてきました。
それでも未来永劫にエネルギー供給が続くものであればそれで良いのかもしれません。
しかし、そうは行かないというのが「オイルピーク」の言わんとしているところです。

オイルピーク説というのは、ハバート(M.King Hubbert)が1949年に発表した論文に始まるものです。その論文は「アメリカ合衆国の原油生産がピークを迎え、その後減少していく」と言うことを述べたもので、原油が枯渇すると言うことを言ったわけではありません。それでも当時は学界、業界の批判を受けてしまいました。しかし、結局はその通りにアメリカでの原油生産はその後まもなくピークを過ぎその後は徐々に減少して言ったということで論文の正当性が確認されました。

これはアメリカの原油生産にとどまらず、世界規模での状態にも当てはまると考えられました。アメリカの原油生産は減少してきても、その後中東の原油に移行することで世界の石油供給は発展してきましたが、それにもこのオイルピーク説は当てはまるものとするとそのあとはどうなるかと言うことが危惧されました。
それを主張してきたのがASPO(The Associatioin for the Study of Peak Oil and Gas)という組織です。日本では石井良忠先生を始めとする「もったいない学会」がそれにあたります。

オイルピーク説というのは、よく言われているように”○○年で石油は枯渇する”というようなことではありません。学説の中心は、単に”○○年に石油供給はピークを迎える”ということを主張しているに過ぎません。しかし、石油枯渇と言うことがもし実現したら人類社会において非常に大きな変革が避けられないわけですが、オイルピークであってももし本当に実現するならばやはり社会の大きな影響は避けられないと考えられます。

なぜそうなるのでしょうか。それはこれまで述べてきたように現代文明が石油依存文明であるからです。しかも他の社会原理を抑えて資本主義が優勢になった以上、経済発展が必須のものと捉えられたからに他なりません。
持続的な経済発展が全世界的に起こっているとすると、今の社会では必須的に石油の消費拡大につながってしまいます。しかし、そこで石油供給が追いつかなくなったらどうなるか。石油不足のための経済発展の阻害が起こることは当然でしょう。石油の取り合いになって国家間の紛争も起きるでしょう。これは予言ではなく、現在の社会情勢そのものです。

そして、この原理は石油だけではなく他のエネルギー源にも当てはまるものと考えられます。石炭・天然ガスなども石油のように今がピークというわけではありませんが、近いうちにピークを迎えその後は減少すると言うのは自明です。さらに、実はウラン資源を考えると核分裂もいずれはそうなると言うことも類推されます。太陽光・風力なども総量が限度があるということを考えれば、同様のものであるといえるかも知れません。