爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

読書記録

「トクヴィル 現代へのまなざし」富永茂樹著

フランスの思想家アレクシス・ド・トクヴィルはフランス革命の直後に生まれて民主主義というものを深く考察し、また当時市民の国として新たな社会構築が進んでいたアメリカを視察して「アメリカのデモクラシー」などの本を書いたことでも知られています。 政…

「海洋プラスチックごみ問題の真実」磯辺篤彦著

最近はナノプラスチックが海水中にも増加しているといった話が聞かれます。 しかしその研究はまだ確実なものではないようです。 これまでのところ正確な結果が出せる研究というものは、1㎜程度より大きいプラスチック片、マイクロプラスチックのもので、そ…

「鬼平犯科帳(十七)特別長編鬼火」池波正太郎著

これも特別長編として一冊が一つの話になっています。 この話もミステリー的要素が強く、謎を小出しにして読者も全く分からないままに話が進むというものですので、もしも読んでみようという方は以下の紹介文は読まない方が良いかもしれません。 平蔵がたま…

「崩れゆく世界 生き延びる知恵」副島隆彦、佐藤優著

鋭い論客として知られる副島隆彦さんと佐藤優さんが世界情勢や国内政治について対談し、2015年に出版した本です。 当時はまだ安倍政治をもてはやす風潮でしたが、その欺瞞や虚構を厳しく批判しています。 またウクライナ情勢では親ロシアのヤヌコヴィッ…

「死の虫 ツツガムシ病との闘い」小林照幸著

ツツガムシ病という病気の名前はかなり有名なものでしょう。 古代から知られており、遣隋使を派遣した聖徳太子が隋の皇帝に送った国書に「恙無きや」という言葉があったということは有名でしょう。 また「つつがない」という言葉も広く使われていたものでし…

「鬼平犯科帳(十六)」池波正太郎著

江戸の町では次々と事件が起こり、それを食い止めるための平蔵や火盗改めの苦闘は続きます。 「影法師」火付け盗賊改め方同心木村忠吾は同僚吉田藤七の娘おたかとの婚礼を間近に控えていました。 しかしおとなしく婚礼を待つという忠吾ではなく、結婚すれば…

「フリースタイル言語学」川原繁人著

川原さんは言語学その中でも音声学という分野の研究者です。 音声学などといってもほとんど分からない人がほとんどだと思いますが、言葉というものが母音と子音が組み合わさってできており(日本語以外の場合、子音ばかりがつながる言葉もあるようです)、さ…

「鬼平犯科帳(十五)」池波正太郎著

この第十五巻は他の巻とは異なり一冊で「特別長編”雲竜剣”」となっています。 初出発表は月刊誌”オール讀物”に七ヵ月に渡り連載されていますので、一編ごとに題名は付けられていますが、長編小説として続いた内容となっています。 火盗改めの与力同心が続け…

「水と緑と土 伝統を捨てた社会の行方 改版」富山和子著

本書の初版の出版は1974年、まだ石油ショック前で高度経済成長の最終期とも言える時期です。 その時代にこのような環境重視の提言を行うことができたということには驚きです。 著者の富山さんは記者から始めて主に都市問題を扱ってきたということですが…

「脱毛の歴史」レベッカ・M・ハージグ著

現代のアメリカでは体毛は忌み嫌われているかのようで、頭髪以外の毛というものは存在を許されないかのようです。(男性のヒゲは除く?) しかしこういった風潮はずっと続いていたわけではなく、様々な歴史的変遷があったようです。 アメリカにやってきたヨ…

「鬼平犯科帳(十四)」池波正太郎著

この巻では正面から大盗賊との対決というものを扱ってはいませんが、やはり様々な方向から盗賊と関わり合っていきます。 「あごひげ三十両」火盗改の与力高田万津之介が酒に酔い大名の家臣と喧嘩という事件を起こしてしまい、平蔵は若年寄堀田摂津守から謹慎…

「世界史を変えた金属」田中和明著

人類文明の始まりは石器などだったのかもしれませんが、ごく初期から金属の利用を始め、現在は各種金属が身の回りにあふれているようです。 そういった金属が「世界史を変えた」ということで、歴史に沿って金属との関りをたどっていきます。 なお、著者の田…

「百人一首で読み解く平安時代」吉海直人著

競技カルタの人気も根強く、百人一首を一般教養として見る風潮もあります。 しかしそれをまともに研究対象とすることはあまりなく、著者も文学者として百人一首を対象として取り上げることに対しては周囲からいろいろと批判をされてきたそうです。 それでも…

「進化が同性愛を用意した」坂口菊恵著

LGBTなどと言って同性愛者などを認める動きが強まっていますが、これはあくまでも人間の多様性を許容し人権を守るということから出てきたことでしょう。 しかし、どうやら同性愛というものは広く生物の中には分布しているもののようです。 そういった観点か…

「鬼平犯科帳(十三)」池波正太郎著

ちょっと趣向を変えた場所や状況でマンネリ打破? 「熱海みやげの宝物」平蔵はしばらくぶりの休み、妻久栄と彦十、おまさなどを連れて熱海に湯治に来ています。 もう一月にもなり、皆そろそろ湯治にも飽きが来ていて、そろそろ江戸にもどろうかと思い始めて…

「ロシアのなかのソ連」馬場朝子著

本書著者の馬場朝子さんは1970年から当時のソ連のモスクワ国立大学に留学、6年間滞在した後はNHKなどでディレクターとしてロシア関係の番組制作などに携わってきたそうです。 馬場さんにとってロシアのウクライナ侵攻は非常な驚きでもあり、またロシア・ウク…

「さらば、男性政治」三浦まり著

ジェンダーの平等というものが日本ではかなり悪い状況で、世界的に見ても下位であるということは知られていることでしょう。 日本社会の至る所でそれが見られますが、特にひどいのが政界です。 女性議員の比率は世界的にも驚くほどの低さとなっています。 こ…

「眠りがもたらす奇怪な出来事」ガイ・レシュジナー著

睡眠について悩みを持っている人はかなりの数になるかもしれません。 しかし、多少の不眠などはこの本の睡眠障害の実例を見ていくと些細な出来事のように思えてしまいます。 著者のガイ・レシュジナーさんはイギリスの神経科学者で、臨床医でもあります。 睡…

「鬼平犯科帳(十二)」池波正太郎著

火付け盗賊改め方を目の敵とする盗賊たちは与力同心たちも付け狙います。 当時非常に殉職の例が多かったそうです。 「いろおとこ」火盗改同心の寺田金三郎は、兄の又太郎が同心在職中に兇賊の襲撃を受け殺されたために家督を継いで同心となりました。しかし…

「はじめまして現代川柳」小池正博編著

川柳というものは江戸時代に生まれて大流行をしたのですが、現代でも作られています。 新聞には読者の作った川柳投稿のコーナーもありますし、保険会社が募集する「サラリーマン川柳」といったものもありました。 そういった流れのもとには専門家として作句…

「ネットいじめの現在」原清治編著

学校でのいじめというものは、かつてのような身体的なものではなく、仲間外れにしたり無視したりといった精神的なものが主流となっています。 そしてそれにネットというものが深く関わってきているため、親や教師から見にくいものとなっているようです。 そ…

「始皇帝の愛読書」鶴間和幸著

秦の始皇帝といえば「焚書坑儒」という言葉でも有名であり、書物などは燃やしてしまえとばかりの反教養主義的な人物かという印象が強いのではないでしょうか。 しかし、中国でも西の辺境から国を強化し全中国を統一するという偉業を成し遂げたのですから、そ…

「鬼平犯科帳(十一)」池波正太郎著

この巻も異色の設定の話が続きます。 「男色一本饂飩」浪人に身をやつしての市中見回り中だった火付け盗賊改め方同心木村忠吾は深川の永寿山海福寺の門前の一本饂飩が名物の茶店豊島屋で昼食をとっていたところを盗賊の首領寺内武兵衛の男色の相手として目を…

「教養としての 日本列島の地形と地質」橋本純著

プレートテクトニクスの理論によれば、日本列島はプレートが4枚押し合っているという世界的に見ても稀な特徴を持っており、そのために地震が非常に多くまた火山も集中しています。 また雨量も多く温帯でこれだけ降水量の多いところは珍しいほどです。 そのた…

「力学入門」長谷川律雄著

力学とは物理学の一部門ですが、感覚としては物理の主要な部分であると感じます。 しかし中高でごく基礎を学び、大学でも教養でわずかに学んだだけでとても十分に理解できているとは言えませんでした。 それでこの本を読んでみたのですが、やはり理解しづら…

「『混血』と『日本人』 ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」下地ローレンス吉孝著

異なる民族(人種)の男女の間に生まれた子ども「混血」、人々の交流が盛んになれば必ずといってよいほど現れてくるものでしょうが、日本では特に第二次世界大戦後に多く出生してきました。 これは占領軍として日本に進駐してきた主にアメリカの軍人たちと日…

「『ポスト真実』時代のネットニュースの読み方」松林薫著

今やニュースを見聞きするのはネットからという人が多くなってきました。 しかしネット上の情報というのはどうやら怪しいものが多いということも問題になってきています。 そのような実情について、かつて日経新聞で記者を勤めその後ネットジャーナリズムを…

「鳥獣戯画のヒミツ」宮川禎一著

京都の高山寺に伝わった鳥獣戯画は日本漫画の祖とも言われており、教科書にも掲載されているため誰でも一度は目にしたことがあるでしょう。 ウサギやカエルが相撲をとったりする絵で有名です。 これがどのように描かれたか、鳥羽僧正が作者という伝説もあり…

「リスクの世界地図」菅原出著

世界のあちこちで緊張が高まり、犯罪の危険性も増加しています。 観光旅行にも大きなリスクがあるのですが、それ以上に問題なのがビジネスで出けたり滞在したりする場合で、そういった人々が犯罪などに巻き込まれることも多発しています。 少し前の事件です…

「鉄道写真 ここで撮ってもいいですか」渡部史絵・結城学共著、長島良成監修

鉄道ファンが増加し、乗り鉄とか撮り鉄といった言葉も普通に使われるようになってきました。 しかし鉄道写真を撮ろうという撮り鉄の中には撮影マナーが悪い人たちもいるようで、時々トラブルを起こしたというニュースが流れることもあります。 そんな人向け…