爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

科学全般

「有害事象報告」では因果関係は分からない。NATROMのブログより。

ちょっと前にNATROMさんのブログに出ていた記事で、ちょっと難しい内容を含むのでこちらに転載するのもどうしようかと思ったのですが、やはり紹介しておきます。 natrom.hatenablog.com表題が「有害事象報告ベースでは因果関係の推論はできない」というもの…

「研究不正 科学者の捏造、改竄、盗用」黒木登志夫著

社会的な不正というものは次から次へと明るみに出るようですが、科学者の研究不正というものも特に最近は数多くなってきたように感じます。 その中でも特に医学や生命科学の分野で目立つようです。 本書著者の黒木さんは発がん機構の研究を長年やってきまし…

「山火事と地球の進化」アンドルー・C・スコット著

温暖化のせい?なのか、世界各地で大規模な山火事が発生しているといわれます。 その原因も失火や放火と報じられることも多いようです。 しかし、古植物学が専門で世界各地で木炭の化石を発掘し研究してきた著者から見るとかなり誤解が多いようです。 まず、…

肥満のリスクとBMI値、永井孝志さんのブログより。

リスク学者の永井孝志さんがいろいろなリスクにまつわる話を書くブログはいつも参考にさせて頂いていますが、今回はあの「BMI値」についての話です。 nagaitakashi.net 私も若いころから太り勝ちな体質で、身長は167㎝ですが体重は一番太っていた頃は80㎏近…

「なぜ、あの『音』を聞くと買いたくなるのか」ジョエル・ベッカーマン著

音や音楽というものは人間の心理に大きな影響を与えます。 それが人の購買行動を左右するとも言えます。 そのような音の影響について、著者は様々な考察を課され「サウンド・マーケティング」を実践していきます。 著者のベッカーマン氏はアメリカで実際に音…

「空気と人類」サム・キーン著

空気というものの重要性は現代人であればほとんどの人が知っているでしょう。 しかしちょっと昔には誰もそれを想像もできませんでした。 そのような空気というものについて、様々な方向から語っていきます。 地球の大気というものも地球誕生以来変わり続けて…

「ドビュッシーやワインを美味にするか?」ジョン・パウエル著

音楽というものは人間の心理に大きな影響を及ぼすということは誰でも同意できることでしょう。 それについて物理学者にして音楽家のパウエル氏が科学的に解き明かしていきます。 なお、パウエル氏の前著「響きの科学」という本は以前に読みましたが、そこで…

「まだ見ぬ地球外生命」山岸明彦著

生命というものは地球だけに限られたものなのか、宇宙には他にも存在するのか。 いろいろな学説があり、またそれを扱ったSF小説なども多数出ていますが、今のところなんの証拠もありません。 本書を著した山岸さんは分子生物学者ですが、一方ではSF小説の熱…

カマキリを操るハリガネムシの遺伝子の由来は、理化学研究所の発表より。

カマキリに寄生してその行動をコントロールするハリガネムシという寄生生物が知られています。 そのハリガネムシの遺伝子を解析したところ、寄生されるカマキリに由来する遺伝子が多く含まれていてそれで行動制御が可能となっているという話です。 www.riken…

「毛の人類史」カート・ステン著

著者のステン博士は医学部で病理学や皮膚科学を研究してきて、特に毛包の研究を専門に行ってきました。 しかしこの本ではそういった方向だけでなく「毛」について社会的、文化的な方向からも考察を加えています。 最初はやはり生物学的、医学的にみた毛とい…

東北新幹線車内で薬品が漏れる事故、しかしあまりにも杜撰な薬品取り扱い。

東北新幹線の車内で乗客が持ち込んだ薬品が漏れ出し大騒ぎとなりました。 www.yomiuri.co.jp 薬品はどうやら硫酸らしいということになってきたようですが、私は一目で濃硫酸だろうと思いました。 しかしそれにしてもあまりにも無知としか言いようがない取り…

「とてつもない数学」永野裕之著

数学というものの重要性はますます増大している世の中ですが、いまだに数学嫌いという人間がかなりの割合を占めているようです。 本書著者の永野さんは数学を愛しているとまで書いていますが、多くの若い人に数学の面白さを感じてもらいたいという思いが伝わ…

線虫がん検査の疑惑、NATROMさんも言及

ごく小さい生物の線虫の一種が癌患者の尿の臭いを好むという話は前から聞いていました。 それを癌患者のスクリーニングに使おうという動きもあり、それを受注して実施するという会社もその研究を行なってきた人が中心となって作られ、業務を開始しています。…

「サイエンス・ネクスト 科学者たちの未来予測」ジム・アル=カリーリ編

編者のカリーリさんはイギリスの物理学者にして作家やテレビキャスターなどもやっているそうです。 科学者たちが未来をどう見ているか。 それを色々な分野の専門家に対して質問し答えてもらったということです。 その分野というのが、人口・環境・気候、医学…

「会話の科学 あなたななぜ『え?』と言ってしまうのか」ニック・エンフィールド著

言語学という分野では、各種の言語を主に「書いて」研究していきますが、どうやら「会話」というのはまた別の科学が隠れているようです。 会話の途中で必ず入るのが「え?」といったものです。 英語で言えば「Huh」や「Uh」 こういった言葉は辞書には載って…

「セレンゲティ・ルール 生命はいかに調節されるか」ショーン・B・キャロル著

セレンゲティとはタンザニアの国立公園で、火山のカルデラの中にあるために他との行き来が難しくそこの独自の生態系が維持されています。 そこでは食物連鎖の系統が形成され有機物を分解する菌類や昆虫、日光で光合成する植物、植物を食べる草食動物、草食動…

「知っておきたい化学物質の常識」左巻健男、一色健司編著

「化学物質」というと何か恐ろしいものという感覚を持つ人もいるかもしれませんが、元素が結合して成り立っている物質とすれば生物も含めてすべてが化学物質と呼ぶことができます。 とはいえ、毒性のある物質、環境問題を引き起こす物質というものも存在し、…

「石と人間の歴史」蟹澤聰史著

著者の蟹澤さんは地質学、岩石学が専門の学者ですが、その調査のために世界各地を訪れるとそこで石や岩を用いた人間の営みに出会ってきたそうです。 人類の文化を石との関わりから見ていこうという本です。 世界各地には古代から作られてきた岩石を用いた建…

阿蘇山の噴火について、想像力を働かせる その2

(その1より続きます) 3.阿蘇山が噴火をする前のこの一帯はどのような地形だったのか。 これもほとんど記述されたものがありませんが、上記の阿蘇山の歴史によれば先阿蘇火山として小火山が形成されていたとされています。 今残っているのは菊池市の鞍岳…

阿蘇山の噴火について、想像力を働かせる その1

富士山噴火については何度も書いていますが、現在住んでいるところからすれば阿蘇山の方が遥かに近いわけで、もしも大爆発ともなれば影響は甚大です。 そんなわけで、阿蘇山の噴火についてあれこれ調べてみます。 1.阿蘇山噴火の歴史 ja.wikipedia.org (…

「40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか」永島計著

気温が上がっているのは間違いないようで連日のように猛暑日だという話が続いています。 熱中症で救急搬送をされたとか、何人亡くなったといったニュースも続いていますが、このように猛暑となった日本列島で本当にヒトが生きていけるのだろうか。 著者の永…

有機フッ素化合物は規制強化されるのか。PFOS・PFOA、PFASについて永井孝志さんのブログより。

有機フッ素化合物PFOS・PFOAといったものが飲料水から検出されるといった事態が全国各地で報告され、問題視されています。 これは海外でも大きな問題となっており、特にEUでは規制強化の方向にあるようです。 ただし、PFOS・PFOAだけでなく他の有機フッ素化…

AF2(フリルフロマイド)は悪の添加物だったのか。

AF2といえばかつて豆腐や魚肉ソーセージなどにも殺菌料として使われていた添加物ですが、発がん性があるとして使用禁止となりました。 しかしその発がん性を確認した試験には多くの疑問があったという報告があったそうです。 FOOCOM.NETで斎藤勲さんが紹介し…

「超圧縮地球生物全史」ヘンリー・ジー著

訳者あとがきに翻訳者の竹内薫さんが書いているように、「最初に原書を手にした時にずいぶんと無謀な試みだなと驚いた。なにしろ38億年にわたる地球生命の誕生から絶滅(?)までをわずか200ページ(原著)で書くのだから」 という本です。 地球誕生の直後と…

「物語 遺伝学の歴史」平野博之著

親がいて子が生まれるということは昔から分かっていたことでしょうが、子どもはどうも親に似ているといったことから遺伝ということが考えられました。 しかしその遺伝というものがどのように作用しているか、これは難題でした。 多くの科学者がその難題に挑…

「『色のふしぎ』と不思議な社会」川端裕人著

今はあまり聞くことのなくなっている言葉で、色盲・色弱というものがありました。 私の年代なら学校で全員検査が行われ、あのいろいろな色の混ざった札の文字が読めるかどうかということをした覚えがあり、結構多くの人が引っかかっていた覚えがあります。 …

「意識の川をゆく 脳神経科医が探る『心』の起源」オリヴァー・サックス著

著者のオリヴァー・サックスさんは、脳神経科の医師で多くの患者を診察してきましたが、その症例を小説として書くということもしてきました。 「レナードの朝」や「妻を帽子と間違えた男」はかなり有名なもので、映画化などもされています。 2015年に82歳で…

「季語の科学」尾池和夫著

俳句には季語というものが必要です。 それは、四季の移り変わりがはっきりしている日本に生まれた文学ならではのことなのでしょう。 そういった季語ですが、その性質や内容についてはあまり認識されることもないまま、使われているのかもしれません。 それを…

「ノーベル化学賞に輝いた研究のすごいところをわかりやすく説明してみた」山口悟著

毎年3人ずつの受賞者が出るノーベル化学賞、毎年受賞者の研究内容の紹介がされますが、おそらくほとんどの人はその意味も分からないことでしょう。 そこで、その受賞研究のどこがすごいのか、わかりやすく説明してみようということです。 化学賞は日本人も数…

「食べるとはどういうこといか」佐藤洋一郎著

本書は「食べる」ということについてありとあらゆる方向から見ていこうという、非常に欲張った内容となっていますが、これは著者の佐藤さんの「食文化をトータルに考える学問は無い」という思いからできているものです。 学問の分野というものはどんどんと細…