爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「内田樹の研究室」より、”カジノについて”

内田樹の研究室」続けての記事は「カジノについて」です。

カジノについて (内田樹の研究室)

ある地方新聞に書かれたコラムだそうですが、他の地方では眼にすることは無いということで掲載されています。

 

カジノ開設を主とするIR法案が成立しようとしていますが、これについて、推進派はそれに伴う経済効果(目先の銭金)、反対派はギャンブル依存症対策の遅れや治安悪化を問題としています。

 

しかし、論議に入っていない重要な点がいくつもあるのではないかということです。

 

目先の銭金といっても、建設工事などの経費は確実に費やされますので、その分は間違いなく存在します。

しかし、それ以上の効果は疑わしいものです。

 

カジノ本体の収益も、世界の多くのカジノで近年急激に悪化しているそうです。

なんとか黒字になるのはラスベガスとシンガポールだけ、他はすべて赤字だそうです。

しかも、本体以外の周辺はそれ以前からほとんど金が落ちることもなく、経済効果自体存在しないとか。

 

カジノ同士の競争も非常に激しいもので、どのようなサービスを提供するかということ自体が問題となるのですが、それについて討議されることは全くありません。

言われているのは、入場料を6000円にするとか、カジノまで地下鉄を延ばすとかいったことばかりです。

まさか、地下鉄でやってくる人たちを相手にして収益が上がると思っているのでしょうか。

 

金持ち達に魅力あるカジノができるのかどうか、疑わしいものですし、その運営主体となるのがラスベガスのカジノ会社が想定されているようです。

カジノを取り仕切るのは「博徒」というのは日本だけでなく海外でも同様です。

アメリカのカジノもマフィアやギャングが取り仕切っていたのですが、一応それは排除してきたそうです。しかし、すべてのカジノにマフィアの勢力が無いのか分かりません。

日本のカジノを舞台にマフィアと暴力団の抗争が起きないと言えるでしょうか。

 

どうやら相当危ういことに進んでいきそうです。

 

”賀茂川耕助のブログ”を読んで NO.1221 米国こそならず者国家

ならず者国家」とはアメリカ自身が頻繁に使っている言葉ですが、それはアメリカにこそふさわしいというのが賀茂川さんの主張です。

kamogawakosuke.info

すでに1990年代には北朝鮮イラク、イラン、アフガニスタンリビアを「ならず者国家」(rogue state)とアメリカ政府当局者が呼んでいたそうです。

もちろん、「アメリカ合衆国こそならず者国家だ」と言っている、評論家ウィリアム・ブルムのような人々もいます。

 

賀茂川耕助さんもそう主張しています。

今回は、アメリカのイスラエル大使館のエルサレム移転と、それに反対するパレスチナ人のデモ隊のイスラエルによる虐殺と、それに対するアメリカの態度について、「アメリカこそならず者国家」としています。

 

トランプが言うように、「大使館移転は決まっていたことでそれを実行しただけ」と言っても、エルサレムという場所の持つ非常に大きな象徴的意味を考えればその実行というものがパレスチナ問題に火を注ぐのは当然です。

 

しかも、それに抗議するパレスチナ人デモ隊に発砲を繰り返し多くの人々を虐殺しているイスラエルに対し世界各国が国連で決議をしようとしても拒否権行使をしているのはアメリカです。

 

まさに「ならず者国家」と言われても間違いのないところでしょう。

 

イランの核問題でも収束の道を歩み始めたところを崩してしまい混乱を弄んでいます。

北朝鮮情勢でも一見和平交渉のように見えますが、これまでさんざん煽っておいて交渉の場に引き出すようなことをするのが、外交交渉術だとても言うかのようなトランプ流のやり方も十分に、「ならず者」と呼ぶのがふさわしいでしょう。

 

なお、「rogue」という言葉を日本では当初は「ごろつき」と訳していたそうですが、それではあまりに品が悪いということで「ならず者」としたそうです。

アメリカ自身に対しては「ごろつき」で良かろうと思います。

G7サミットで「欧米間の裁定役」?安倍が活躍?した成果がこれか。

(このブログでは、メインの読書記録などを1日1題、時事関係をあれば1題といったペースで更新していますが、G7やら米朝会談やらで大変な時期ですので、緊急事態ということで、なにか起こればすぐ更新ということにしておきます)

 

G7サミットでは集結後も大変なことになっているようですが、開催中にも欧米間の食い違いが大きく難航する中を、安倍首相が裁定役として活躍したという、自画自賛記事がありました。

www.sankei.com

どうやら自分の活躍でなんとかまとめたというつもりになっているようで、外交上手と言う虚像をさらに自慢したいようです。

 

しかし、その挙げ句が終了後の大混乱となってきました。

www.nikkei.com終了を待たずにシンガポールに向かったトランプは首脳宣言を承認するなとの指示。

何もなかったことにしようというのでしょうか。

 

もうサミット自体存在価値が消えました。

 

いくら強心臓・安倍でも、このサミットを自分の外交実績に挙げるわけには行かないでしょう。

「内田樹の研究室」より、”韓国のネットメディアからのインタビュー”

内田樹の研究室」、最近少し更新がなかったのですが、ようやく新しい記事が出ました。

韓国のネットメディア「ニューストップ」と言うところからインタビューがあり、それに答えた内容です。

なかなか面白いことを聞き、それに対して内田先生の答えも面白いものでした。

 

韓国のネットメディアからのインタビュー (内田樹の研究室)

 

第1問は、南北首脳会談と共同宣言で安倍政権が主張していた再軍備の必要が無くなるが、これまでの安倍のプロパガンダが受け入れられなくなるのではないかというものです。

 

それに対する答えが「安倍政権を支持しているコアな層(日本の有権者の30%強)は別に合理的根拠に基づいて政権を支持しているわけではありません。
ですから、北朝鮮の「危機」なるものがいくぶんか解消されたとしても、彼らは改憲や軍事力増強が必要であることの根拠はまた別のところから探してくると思います。」

 

ということです。まあそうなるでしょう。

 

2から4問目、日本の右翼勢力についての質問への答えは妥当なものでしょう。

まず、「天皇主義」であるかどうかは、極めて疑わしい。

しかも、外国の軍隊の国内への駐留に対して一切反対をしないという、世界的に見ても例外的な「ナショナリスト」です。

これは、天皇を最高のものとして崇めているのではなく、それ以上のもの「アメリカ」に忠誠を誓っているからです。

厳密な意味ではナショナリストと呼ぶことはできず、それに似た存在はかつての東側諸国の「共産主義者」、ナチス支配下のヨーロッパ諸国の「対独協力者」であるとしています。

 

5問目では、安倍の拉致問題北朝鮮核問題等に対しての姿勢ですが、ニューストップ担当者は彼がこれまでに実際には何一つ実行しようとしなかったということを的確に把握しており、それがここに来てなんとかポーズだけ決めようとしていることも見抜いています。(なかなか鋭いジャーナリストのようです)

内田先生は、この安倍の姿勢は北朝鮮の術中にはまるだけだとしています。

うまく制裁解除や経済支援を引き出されるだけでしょう。

 

6問目も、このネットメディアの担当者の意識が非常に高いことを示しています。

民族主義ナショナリズムと言っていますが、北東アジアではそれは単なる人種主義に過ぎないのではないか。(おそらく日本だけでなく自国の韓国や中国も指しているものと思います)

内田先生の答えもその克服は困難としています。やはり国民国家の内部に確かな共同体を再構築していなかければならないのではと。

 

韓国国内向けのネットメディアでしょうが、これを読んで理解し対応できる人たちが韓国にも居るのであろうと思い、少しだけ希望が持てるものと感じました。

「不道徳な見えざる手」ジョージ・アカロフ、ロバート・シラー著

「見えざる手」といえば、自由市場というものを信奉し、それに任せることが自由主義経済を最もうまく動かすのだという信念のようなものだと思っていました。

まあ、かなり怪しいのではないかと疑ってもいましたが。

 

これは、市場に関係するすべての人が最良の選択をし、行動するということが前提となります。

しかし、どうもそうじゃないのではないかという事例が頻発しています。

「釣り(Phishing)」と「カモ(Phool)」ばかりの騙し合いが市場なんじゃないのだろうか。

この本では、そういった釣りとカモの例を嫌というほど取り上げています。

 

なお、そのような本ですがこの本の著者の二人はどちらもノーベル経済学賞受賞者です。

そのような経済学界の重鎮でも見逃すことができないほど、釣りと言うものが大きな存在なのでしょうか。

 

なお、「phish」という言葉はもちろん「fish」の綴を変えて作られたもので、魚釣りのように獲物を釣るということで、phishing(フィッシング)詐欺という言葉が使われていますが、「phool」の方はこの本で著者が作り出した造語のようです。

まだ、広く使われているというわけではないようですが、釣られるカモを意味します。

もちろん、元の単語はfoolでしょう。

 

カモは、自分ではそうではないと思っている人も多いかと思いますが、誰でもその要素を持っているもののようです。

住宅や自動車といった高額な買い物でもカモにされる人が居ますが、そこまで行かなくても日用品や食品などではついつい買ってしまうということは誰でもありそうです。

そういった、「なぜ利益にならない判断をしてしまうのか」というのが本書の主張でもあります。

 

こういった「カモ釣り」がよく見られる分野というものもあるようです。

それは、「個人の財務的な安全性に関する分野」「マクロ経済の安定性をめぐる分野」「人々の健康をめぐる分野」「政治統治の質をめぐる分野」の4つだそうです。

ちょっと抽象的な表現ですが、クリスマスプレゼントの大盤振る舞い、金融市場での投資対象、製薬業界、金をつぎ込む選挙戦といった内容です。

 

そういった例が嫌というほど続きますが、それが最上の経済システムと言われている自由市場の裏面です。

それで良いのか、それを正す必要があるのか、そういった点については深くは記述されていませんが、本書の新しさは「釣り均衡」という観点を打ち出したことです。

ただし、その中身については細かい記述はありません。

著者二人はすでに高齢ということで、釣り均衡と通常言われている普通の顕示選好との関係を解き明かすということはできないようです。

これは若い経済学者に任されているということですが、どういう具合に発展するのでしょうか。

 

不道徳な見えざる手

不道徳な見えざる手

 

 

 

日米貢物会談、やはり多額の上納金が

G7の前に寄り道をして、何をしてくるかと思えば拉致問題は忘れませんと言うリップサービスを貰っただけ。

そのために数千億円の上納金を貢いだようです。

www.nikkan-gendai.com

日刊ゲンダイが紹介していますが、戦闘機や航空機など数十億ドルを献上したとか。

記事の最後にこの記者の方も書いています。

 

一体どれだけの血税をドブに捨てれば気が済むのか。こういうヤカラを「売国奴」と言うのだ。 

 

まさにその通りです。

 

 

「依存症臨床論」信田さよ子著

「依存症」といってもいろいろなものに対しての依存というものがあるようで、最近では「ギャンブル依存」というものが、カジノ法案審理の際に問題となりました。

 

この本では、「アルコール依存」を主に扱っています。

著者の信田さんは、アルコール依存症というものが治療の対象として見られるようになったごく初期から、関わってこられた方です。

医師ではなく、心理職として精神科病院に入り、しばらく治療に加わった後に、独立してカウンセラーとして開業しました。

 

アルコール中毒と言われて、あまり治療もされないまま精神病院に入院しているだけのような状態であったアルコール依存症患者に対し、医師や心理職の人々が取り組もうとしだしたのは、1960年代になってのことだったそうです。

とはいえ、酒の忌避剤というものはあったとは言え、依存症そのものを治療する薬剤もなく、治療方法というものも無い中で、断酒と言うことをやっていくということは、医師だけでできることではなく、その他のスタッフや患者の家族なども巻き込んでもものとしていかなければならないものでした。

 

精神科医療の世界では「コメディカルスタッフ」という言葉がよく使われており、看護師や薬剤師は別として、ソーシャルワーカー心理療法士、作業療法士といった人々が診療に関わっています。

その中で、「心理職」と言う人々はまだ国家資格となっていないそうです。

しかし、患者自らの意志として断酒会に参加してアルコール依存から脱却するためには医師だけでは不可能といえるもので、多くの人々が支える必要がありそうです。

 

アルコール依存症というものに長く関わってきた著者が、それを取り巻く多くのものについて書いたという、重い内容の本ですが、著者がその仕事を始めた40年前と比べて現在は状況が改善されているのでしょうか。

まだまだのようにも見えます。

 

依存症臨床論

依存症臨床論